子どもの「ネガティブな感情」を否定してはいけない

こんにちは、学びスタジオの奥川悦弘です。
ご訪問いただき、ありがとうございます。
今回は、ネガティブな感情について書きます。
ネガティブ感情は否定しないで受け止める
子どもにはいつでも明るく、幸せな気持ちでいてほしいと願います。
そのために、
ある日子どもが悲しみや怒りの気持ちを態度や言葉にあらわしてきたとき、
ついついそれを否定するようなことを言ったり、
子どもの気を紛らわそうとしたり、
叱りつけてしまったり……。
しかし、
実は困難や逆境に直面して、
子どもがネガティブな感情を抱いたときこそ、
強くしなやかな心を育てるうえで重要なターニングポイントです。
このときに、
子どもが抱いたネガティブ感情を否定せず、
親としてどう受け止め、
どう声かけをするか?
それによって、
その後の子どものレジリエンス(回復力)に大きな差が生まれます。
私たちは日々、さまざまな気持ちを感じていて、
その感じ方は成長するにしたがって変化していきます。
たとえば、
赤ちゃんのころの「快」か「不快」か、という単純な感じ方から始まり、
成長するにしたがって、徐々に「喜び」「怒り」「悲しみ」「恐れ」といった気持ちまで、
より複雑な感情を感じられるようになります。
ところが、
この子どもの「気持ちの成長」について、親はつい見逃してしまいがちです。
「歩けるようになった」「ひらがなが書けるようになった」などの成長はわかりやすいのですが、
心の成長については、目に見える変化がない分、気がつかないことが多いようです。
たとえば、
やきもちをやいて悪さをしたとき、
そのやきもちという感情を感じられるようになったことを親が喜ぶことはあまりないかもしれません。
そのため、
子どもの気持ちの成長において、
とても大切な親のサポートができないことが少なくありません。
しかし、
たくましく、幸せな人生を送るためには、
外から見える成長に加えて、
目には見えない心も育てていくことが欠かせません。
「気持ち」と仲良くなることが大事
子どもの心を育てるうえで基本となるのが、
「子どもが自分自身の気持ちと仲よくなる」ように導いていくことです。
これは、感情知能を育てていくことともいえます。
感情知能とは、
自分や他人の感情を認識、理解し、うまくとり扱う能力のことです。
この力は、
よりよい選択や行動につながり、良好な人間関係を築いたり、学業によい影響を与えたりすることがわかっています。
そして、
この力は自宅や学校で接する大人に影響されます。
ですから、
親が子どものコーチとなって、
子ども自身や他人の感情について話し合うことで、
気持ちと仲よくなる力を伸ばすことができます。
私たち人間が日々感じているさまざまな気持ちについて、
「ポジティブ感情」と「ネガティブ感情」とに分類できます。
楽しい、うれしいといった、感じると心地よさや喜びを覚えるのが、ポジティブ感情、
そして、悲しみや不安やイライラなど、体験すると不快な感じになるのがネガティブ感情です。
どちらの気持ちがよい悪いということではありません。
感じると快か不快かという分類です。
どちらのタイプの感情もそれぞれに意味があり、
生きていくうえでは大切であり、
誰もが持っているものです。
多くの人が、
できるならば味わいたくないネガティブ感情には、
どのような意味があるのでしょうか?
たとえば、
夜道を歩いているとき、背後からカサッと物音がしたとします。
心臓がドキドキして、冷や汗をかくと同時に「怖い!」と感じ、
その気配に意識は集中し、
命を守ろうと逃げる態勢になるのではないでしょうか。
恐怖を感じるから、
危険な状況から逃げようと試みることができます。
ほかのネガティブ感情も同じように意味があります。
「怒り」は自分の大切なものが侵害されたというサインであり、
大切なものを守ることにつながります。
「悲しみ」は失ったものの大切さを教えてくれますし、
「落ち込み」は体を休めて心身を守る必要があるというサインになります。
つまり、
ネガティブ感情は、
生存本能として私たちが自分の命を守るために存在しているのです。
このような重要な役割があるため、
人はネガティブな感情を感じやすく、
ネガティブな出来事がより頭に残りやすいといわれています。
その日のいやな出来事がずっと頭に残ったり、
子どものできない部分のほうが気になったりしてしまうのも、
この特徴のせいです。
ネガティブ感情も成長には必須
私たちは、
子どもがネガティブ感情を示したときに、
ポジティブな気持ちになるようにと盛り上げたり、
機嫌を直そうと試みたりすることがあります。
しかし、
ネガティブな感情を感じられること、
そして、ときにネガティブな感情を持ちながらも行動する力を育てることは、
強い心を育てるうえで欠かすことができません。
子どもがネガティブな感情を表現したときは、
無理に気持ちを変えようとしたり、判断したりすることなく、
まずはじっくり話を聞き、
そのままの気持ちを認めて受け止め、
感情を感じられる時間を与えてください。
そのうえで、
子どもが気持ちを立て直して問題を解決していけるよう、
サポートをしていきましょう。
それは、「子どもの気持ちを言葉にしてあげる」ことです。
自分の気持ちをあらわした言葉を親からかけられることで、
その出来事から少し距離をおくことができ、
出来事へのストレスを軽減し、
気持ちを楽にしてくれる効果があります。
また、
子どもは「私の気持ちを正しくわかってくれている。受け止めてくれている」と感じ、
傷ついた心を癒やすことができます。
この繰り返しによって、
親子の絆が深まり、よい関係性を築いていくことができるのです。
私たち大人も不安なとき、イライラしたとき、
その気持ちを抑え込まずに、
頭の中であっても言語化することで、
気持ちが落ち着きますね。
気持ちの言語化、気持ちのラベリング
子どもがネガティブな感情を持っているとき、
すぐに前を向くように励ますことより、
まずは今感じている気持ちを受け止めて、
言葉にしてあげることが立ち直る力を発揮するには近道となります。
感じている心の痛みの存在を認め、
そこに「共感の言葉」で命を吹き込むことは、
心の苦しみを軽減することにつながるのです。
感じている気持ちを言葉で言いあらわすことを「気持ちのラベリング」といいます。
自分の感情を言葉にすることが、
嫌な出来事に関するネガティブな感情やストレスをやわらげるのに効果的があります。
「よい・悪い」の表現には要注意
このとき注意したいのは、
「気分がいいな」とか「最悪の気持ちだ」とか、
よい悪いという表現を使うことです。
子どもたちは、
「ネガティブ感情は悪いもの」「悪い感情を持つ自分はダメな子だ」と考えがちです。
「さまざまな感情を持つことはいいこと」なので、
ふだんの会話の中で、感情によい悪いという表現は不適切になります。
また、
自分の感情に気がつけるようになると、
他者の感情にも気づくことができるようになります。
他者の気持ちを理解する能力が高くなれば、
相手に対してかける言葉選びや行動も変わります。
社会の中でのコミュニケーションにも大きく影響することになります。
気持ちをあらわす言葉をたくさん用意しておく
子どもたちは、
毎日、さまざまな感情を感じているものです。
子どもは気持ちをぴったりあらわす言葉に大きく反応します。
だから、
子どもの感情を言語化して、「感情のラベリング」を行うときには、
できるだけ実情に沿っていて、
その子の心のままを表現して声をかけてください。
たとえば、
ただ「悲しいね」というより、
もっと具体的に「くやしいね」というように。
同時に、
感じている感情は子ども自身のものであって、
たとえ親であっても全く同じ気持ちを持つわけではないことを認識できるようにすることも大切です。
大事な点は、
子どもの気持ちを言いあらわす言葉をできるだけ数多く用意することです。
そして、
気持ちは受け止めながらも、
感情移入しすぎず、子どもの感情を映す鏡となって見せてあげることです。