日本人が培ってきた読む学習法
こんにちは、学びスタジオの奧川悦弘です。
ご訪問いただき、ありがとうございます。
今回は、日本人が培ってきた学習法について書きます。
∴江戸時代の学習方法
江戸時代に、3つの学習方法が行われていました。
それは
素読と講釈と会読です。
順番に説明します。
∴素読
“素読”は、
7歳ごろから、
意味内容を解釈せずに、
ただ声をあげて、
文字のみを読み習い、
暗誦することを目指した学習方法です。
当時は「大学」「論語」「孟子」「中庸」の四書と
「詩経」「易経」「書経」「礼記」「春秋左氏伝」の五経
の暗誦が目指されました。
素読は、
学習の基礎であり、
外国文としての漢文を国文化して読む作業であり、
習読して暗誦するまで行われました。
∴講釈
“講釈”は、
“素読”が終わった15歳前後から始められました。
先生が生徒たちの前で、
経書の一章、あるいは一節ずつを
講解して聴かせる(解釈を説明する)、
口頭で行われた一斉授業でした。
∴講釈の欠点を補う会読
しかし、
“講釈”では先生が一方的に説明するので、
生徒が自分で「思」うこと、考えることをしなくなってしまうという観点から、
”講釈“と並行して行われたのが “会読”と“輪読”です。
どちらも共同読書です。
∴輪読
“輪読”は、
10人程度の生徒が一つのグループとなり、
一人が指定されていたテキストを読んで、
講義をする。
その後に、
他の者がその読みや講義について疑問を出したり、
問題点を質問したりします。
講者はそれらに答え、
積極的な討論を行います。
これを順次、
講義する箇所と人を代えて繰り返していきます。
先生は討論の間は、
黙っていて、
意見が対立したり、
疑問が解決しなかったりしたときに、
口を出すだけでした。
ここでは、
生徒同士の切磋琢磨が求められています。
∴会読
“会読”は、
数人が一箇所に集まって同一の本を読み、
研究や討論をすることです。
読書を通じての討論の場
という特徴を強く持っています。
この“会読”には、
❶相互コミュニケーション性
❷対等性
という2つのルールがありました。
❶相互コミュニケーション性
会読の場では、
沈黙せずに、
口を開いて討論することを勧めていました。
当時は、
命令と服従の原理に基づくタテ社会であり、
武士たちの間には”黙って忍従する習慣”が根付いていただけに、
討論を推奨される会読は非日常的な空間でした。
❷対等性
討論においては、
加者の貴賤尊卑の別なく、
平等な関係で行われていました。
これは生徒間であれ、
師弟間であれ同様で、
社会的な身分関係も度外視されました。
例えば
それが藩主と家臣という関係でも平等に議論が交わされました。
∴藩主と対等に会読
当時は、
家臣にとって藩主は神のような雲の上の存在です。
その藩主と対等に意見を言える機会を持つということは、
相当の緊張感の中、度胸を鍛えることになりました。
それが、
どんな相手に向かっても、
正々堂々と対等に話をしたり交渉することができる土台になりました。
“会読”は、
リーダーを創る学習法でもありました。
∴アクティブラーニングをやっていた
明治時代に
アメリカから黒板が入ってきて、
一斉授業が始まりました。
この一斉授業は受け身の学習です。
そして今、
受け身の授業から、生徒参加型の授業
つまりアクティブラーニングが導入されるようになりました。
しかし、
このアクティブラーニング、
日本では、
実は、会読を通じて、江戸時代からすでに行われていました。
∴まとめ。日本人が培ってきた読む学習法
江戸時代までの勉強方法は、
“素読”、“輪読”、“会読”と、
読むことが基本でした。
暗唱し、知識を蓄えて、
読んだ内容についてプレゼンをして、
自分の意見を堂々とぶつけ合いました。
今、思考力・判断力・表現力や積極的に学ぶ姿勢が求められる中、
読むことを中心にした学習を大切にしたいですね。