「褒め言葉」が子どもの「足かせ」に

こんにちは、個別指導塾 学びスタジオの奥川悦弘です。
ご訪問いただき、ありがとうございます。
今回も、褒め言葉について書きます。
∵「褒め言葉」は子どもを縛る言葉
「こんな成績取れるなんてすごいね!」
「いい子にしてくれて本当にうれしいわ」
などの褒める行為を、
多くの親は「よかれ」と思ってやっていると思います。
しかし、
こういった「褒め言葉」は、
「足かせ」にもなる可能性があります。
なぜなら、褒めることは、
「これだと良い」「これだと悪い」と、評価の基準を作ってしまうからです。
「100点取るなんて偉いね!」と喜ぶ親は、
ともすれば、
「99点では許してもらえない」と自分を追い詰めてしまう子どもを生み出します。
「100点を取って偉いね!」というメッセージは、
同時に、
「でも99点ならダメ!」というメッセージにもなりうるからです。
子どもがこのような言葉を受け取ると、
親に喜んでもらおうと一生懸命勉強をします。
100点が取れたときはいいのですが、
取れなかったときに「次回は100点が取れるように頑張りなさい」と言われたり、
親が残念そうな表情をしていたりするのを見ているうちに、
「100点を取れない自分はダメ」という考えに囚われるようになります。
これは不安の表れです。
100点を取れかなった答案をこっそり捨てる、
というような小さな歪みから始まり、
そのうち、
生活面すべてにおいて「自分はダメ」と考えるようになると、
心身に歪みが生じ、
朝起きても体が動かず、
学校に行けない状況になることもあります。
親が「よかれ」と思って言ってしまいがちな言葉には、
学校の成績に限った話ではありません。
たとえば、
「何でも食べてくれてお母さんうれしいわ」という言葉は、
同時に「食べなかったら、お母さんはあなたのこと嫌いになるからね」
というメッセージとして子どもに伝わる可能性もあります。
「運動がこんなにできるんだから、将来はオリンピック選手だね!」という言葉も、
子どもに対して必要以上にプレッシャーをかけてしまいかねない言葉です。
トップが取れなかったときに心身が不安定な状態になり、
思うように体が動かなくなったりします。
∵「からだの脳」と「こころの脳」
ところで、
子どもの脳は、
10歳を過ぎた頃からだんだんと、
「からだの脳」(間脳・脳幹)と前頭葉をつなげる神経回路が構築されていきます。
この神経回路が「こころの脳」です。
「からだの脳」は、
人間が生きていくために必要な原始的な欲求や感情をつかさどる生命維持装置です。
しかし、
社会の中で他者とうまく生きていくためには、
「からだの脳」から発せられる喜怒哀楽を、
いつでも思いのままに表に出すわけにはいきません。
そこで、
「からだの脳」と前頭葉を神経回路でつなげることによって、
自分が置かれている状況や他者との関係性を考慮に入れて、
論理的な判断ができるようになっていくのです。
前頭葉は、
「おりこうさんの脳」(大脳新皮質)の領域にあり、
そこに何度も繰り返し入ってきた刺激、
すなわちこれまでの経験や知識・記憶を基に、
自分独自の考え方で判断できる脳です。
もし「おりこうさんの脳」に、
「失敗しても大丈夫だ」という経験・記憶が入ってこないならば、
前頭葉は失敗に対して判断することができません。
そのことが脳の構築を歪め、
前頭葉と「からだの脳」との神経回路が正しく構築されてず、
心身症状、ひいては不登校につながったりします。
∵「ほめる」のではなく、「認める」ことが大切
このように、
親が成績をほめてしまうことは、
子どもの脳の正しい発達を阻害する要因になりかねません。
しかし、
親は、子どもの成績を気にします。
生まれたときには、
「健康に育ってくれればそれで十分」と思っていたのに、
成績という評価で、
自分の子どもを相対的に判断し始めてしまいます。
しかし、
その評価は絶対的なものではなく、
環境によって変化しやすいものです。
そして、
親が口を出さなくても、
子どもは学校で成績という評価にすでに十分にさらされています。
点数などの数値で「評価」するのではなく、
日々の生活の中で子どもの成長を発見して「認める」のが親の役目です。
∵家庭生活で必要な「軸」で子育て
親は学校の評価にはいっさい関わらず、
家庭生活で必要な「軸」のみを持って、子育てをしていきます。
「軸」は、子どもが生きていくうえで本当に必要なことで、
子どもがその「軸」から外れそうになったときのみ、
全力で叱るべきです。
親に評価されず自由にさせてもらえれば、
子どもは、
ほかと比較して「もっといい点を取りたい」と努力したり、
もしくは「まあ、点数が低くてもみんなと仲よくできていればいいや」とより友達と仲よくしたり、
いずれにせよ、
「自分なりに考えて行動」し始めます。
子どもが成長している様子を発見したら、
それを言葉で認めてあげましょう。
そうやって「成長する子ども」を「認める」ことこそが、
子どもの「こころの脳」を育てます。
生活が子どもの脳を育てる、というのはこういうことです。
∵失敗はして当たり前
親は家庭生活における「軸」を持つことが大切です。
「認める」ということは、
言い方を変えると、
子どもを「信じる」ということです。
子育てとは、
「心配100%と信頼0%」の子どもを、
日々の家庭生活の中でコミュニケーションを取りながら成長させ、
「心配0%と信頼100%」の状態にして社会に送り出すことです。
子どもは最初、
何もできない状態で生まれてきます。
親は子どもに対し、
常に必死に目を配りながら成長の姿を認め、
あるときには、
たとえ心配であっても信じて任せ、
少しずつ「信頼」の割合を増やしていくしかありません。
子どもを信じて任せると、
ときには失敗してしまうこともあります。
しかし、
事前に失敗することが予見できていたとしても、
それが命に関わるものでない限りは、
親は信頼して見守ることが必要です。
失敗こそが、
「おりこうさんの脳」に知識と経験を植えつけます。
むしろ、
失敗は脳を育てるのチャンスです。
次にどうすれば失敗しないかを自身の力で考え、
それを正しい論理として身につけていくということが、
子どもの脳をよりよく育てていくのです。
∵「家庭内の子ども」を見る
それでは、
子どもがテストで100点を取ったとき、
どのような言葉をかければいいのでしょうか。
親が点数の評価をしなくても、
子どもはすでに学校で先生などから褒められているはずです。
そして、
「テストで100点を取ったこと」はあくまで、
学校という「家庭の外の生活」においての話であり、
親がタッチすべきことではありません。
親が問題にすべきことは、
「家庭の中で子どもがどのように生活しているか」です。
もし、
子ども自身が100点の答案を喜んで自分から見せに来たら、
「うれしかったね」と共感したり、
「テストの問題を読んでその答えを書くことができて、さらに100点取れるとは成長したねえ!」
と言って認めてあげます。
しかし、
テストの点数よりも親に「認めて」ほしいのは、
家庭での「役割」をきちんとする子どもです。
たとえば、
朝ごはんを作ることが役割だったら、
試験期間であっても勉強を切り上げて、
役割である朝ごはんを確実に作る子どもに、
親は毎朝「ありがとう」と感謝します。
ときには、
「勉強忙しいんだったら、今朝はごはん、お母さんがつくろうか?」と言ってあげれば、
子どもが「ほんと? ごめんね。ありがとう、助かった!」と親に感謝するでしょう。
家庭生活の中で、
そのような会話を交わしていくことが、
子どもの脳が育ていきます。
親から認められている子どもは、
テストの点数に極端に一喜一憂しません。
もし悪い点数を取ったとしても、
自然に「私は成長の過程にいるんだから大丈夫」と思うことができます。
「親に信頼されている」という安心感が子どもの脳をよりよく育てます。
信頼されることで、
勉強をなぜしなければならないのか、
だんだんと自分で判断できるようになっていきます。
成績のことをとやかく心配しなくても、
認めてさえいれば、
自分で必要性を判断して、
自主的に勉強をするようになっていきます。
∵まとめ
「結果を褒める」ことは、
もし子どもが成功しかしないならば、効果的ですが、
いつか子どもは必ず失敗します。
そして、失敗は恥ずかしいことだと感じて自信を失います。
「努力を認める」ことは、
結果はどうであれ、努力することが大切で、
たとえ失敗しても、努力して克服しようと思うことができます。
そして、失敗を克服しながら自信を積み重ねます。